Ⅲ 入札制度改革に向けた当社の見解

入札制度改革に向けた当社の見解

1.長野県の入札制度と当社の活動

 当社は、公共事業における入札が不透明で、天下りや不正がはびこる現実を、法を遵守し真面目に努力するものが報われるように、何とか改善しようと長い間活動を続けてきました。
 これまでに当社は談合組織から離脱し、以来幾多の困難はありましたが、全国でも先進的な取り組みとして注目された長野県の入札制度改革を、公共事業の発注の本来あるべき姿として、県行政とともに進めてまいりました。
 今日では国も、従来の指名競争入札ではこれ以上国民の理解は得られないと、すべての行政組織に対して一般競争入札にするように指導しています。でも先進県の長野県においてすら市町村では改革は進んでいません。
 どのような改革にも痛みが伴います。マイナス面は知恵を出してどんどん改善していかなければなりません。過去の入札制度をよしとする人達は、マイナス面 だけを強調して長野県の入札制度改革は間違いであったと主張しますが、過去の指名競争入札制度が腐敗の温床となり、特に天下りによる官僚天国となっていた ことを考えると、それだけでも制度改革はプラスのはずなのです。
 公共事業は税金が100%使われます。主人公は納税者一人ひとりの市民です。私達は企業ですから、これからも会社の利益も追求し、そこに働く社員の幸福 も追求しますが、同時に納税者として、市民として、税金が公平・公正に使われていくために監視し、より良い方向に積極的に意見し、提言していきたいと思っています。

 

2.入札制度改革に対するその後の県内の動き

 入札制度改革についても最近後ろ向き姿勢が見えてきました。
 長野県では、入札に参加する業者の範囲を狭めて談合が出来やすくしようとする業者からの働きかけがあります。
 市町村では、総務省の指導によって一般競争入札を取り入れるところも増えてはきましたが、多くは参加業者を市内に限定しているため指名競争入札と大差なく、これでは談合もなくなりそうにありません。
 専門的に特殊な入札を除いて、全ての入札が入札条件を満たせば誰もが参加出来るというところまでは行っていません。理由はいろいろ付けられますが、本音 は積極的に導入したくないということでしょう。測量や土木設計などの委託業務においては、一般競争入札を導入している市町村は皆無に等しいのが現実です。
  そもそも行政における発注形態は、一般競争入札が原則とされています。指名競争入札はあくまでも特例とされていますが、現実にはほとんどが指名競争となっていました。
 なぜ一般競争入札を導入したくないのでしょうか?
 表向きには、一般競争入札にすると不良・不適格業者が参入するからと述べるでしょう。 市内業者育成のためという声も聞かれます。しかし本音は、
 ① 指名する権利を温存して、業者に対して常に優位な立場にいたい。
 ② 議員や地元の名士の口利きに対していい顔が出来る。
 ③ あわよくば金品の受領まで・・・ということなのではないでしょうか。
 また大規模な行政になると、指名入札と天下りは密接に関係しています。指名競争入札でなく一般競争入札になると、これらの特典は全て失われてしまうのです。仮の話ですが、指名選定が公平・公正で透明性が高く、且つ職員の恣意性のまったく無いものであるならば、指名競争入札でもよいと思いますが、現実は全く正反対で、首を傾げたくなる指名が非常に多いのです。
 

3.入札制度改革の前進に向けて

 入札制度改革はもちろん大きな変革ですから、プラス面もマイナス面もあります。
プラス面
 ① 資格のあるものは誰でも入札に参加でき、指名競争に見られる指名の恣意性が排除できる。
 ② 談合がしにくくなり、競争性が高まる。
 ③ 競争性が高まって入札価格が下がり、税金の無駄がなくなる。
 ④ 発注者と業者との癒着がなくなり、天下りのうまみもなくなって天下りが大幅に減る。
マイナス面
 ① 地元業者の育成が図れない。
 ② 不良・不適格業者が入札に加わる可能性がある。
 ③ 利益率が減り、倒産する業者が出る。
 ④ 発注に時間を要し検査も厳格化するため、十分な時間と人材の確保が必要。
 しかしマイナス面は業者の業種転換や業界の構造改革、行政の機構改革、条件付き一般競争入札の導入、総合評価落札方式の併用などで解決が図れるものが多いのです。業者からの不満を聞いて簡単にもとに戻すようでは、すぐもとの談合の世界に戻ってしまいます。